教室がオープンすると贈られる、
赤い珠のそろばんオブジェ

石戸珠算学園の石戸謙一会長と沼田紀代美社長にお話しを聞かせていただけることになりました。インタビュー会場となったそろばん博物館には、珍しいそろばんや歴史ある関連書籍がいっぱいです。のれんのデザインや椅子の座面まで、そろばん柄! 愛です! 凝ってます!

石戸珠算学園の石戸謙一会長、沼田紀代美社長とソフケンのそろばんの前で記念写真

ソフケンが制作した特製の赤い珠のそろばんオブジェの前で記念撮影をしました。

――よく写真に登場している赤い珠のそろばんオブジェ。これはどのように使われていますか?

沼田社長 そろばん教室の象徴として、新しく教室がオープンするたびに、ひとつ、教室長へプレゼントしています。大きいのに軽くて、珠がちゃんと動かせるところが気に入っています。写真を撮るときに欠かせないアイテムですね。

――いわゆる「インスタ映え」というか、写真映えするのがとても素敵です。ところで沼田社長、いしど式の教育理念をうかがえますか?

石戸珠算学園の沼田紀代美社長

沼田社長 そろばん自体もそうですが、いしど式の教育理念は「夢を育てる」なんです。なぜ夢を持てないか、といえば、自分には無理。こんなことをやっても無理、無駄、という思いがあるからなんです。そこを基本的に変えていきます。

教室のカリキュラムの中では個別指導で「その子ができるよう」にしていきます。目標設定も、短期の目標、中期の目標とあります。石戸会長の提唱する「イメージコントロール法」を取り入れて、楽しく目標をもちながら、自分の中に良いイメージを描いて行動できるプログラムでやっています。

――生徒さんのお母さんからはどんな声がありますか?

沼田社長 計算ができるようになるのは、当たり前なんです。子どもが、そろばんを通して、自分に自信がついて、変わっていくんですよね。たとえば、内気な子が積極的になる。「学校の授業では手も挙げられなかった子が、学級委員に立候補したんです」とか。「読書感想文のコンクールで金賞が取れました!」とか、「受験勉強に粘り強さがでて、合格できました」など、人間力の基本がついて変っていく、成長の基盤になっているな、と感じます。

――計算力の向上だけではなく、そろばんがきっかけで、頑張る力、あきらめない気持ちが身につくということなんですね。

石戸珠算学園

沼田社長 スポーツにしても勉強にしても、いろいろな分野で「そろばんのおかげで、こんなことができるようになりました。頑張れるようになりました」と言われますね。

――なぜ、そんな変化が起こるのでしょう?

沼田社長 いしど式では、必ずわかるようになるまで教えるんです。学校だと一律のペースで進めるので、できない子は置いてきぼりになってしまうんですよね。できないとつまらない、できないから嫌だ、になってしまう。いしど式の場合は、個別対応のスモールステップで、できるようになるまでやる。丸をいっぱいもらうから、嬉しくなるし、お母さんもほめてくれる。そうすると、子どもは「楽しい~」「できる~」って喜んで通うようになるんですね。

――「楽しい」だけで伸びるものなんでしょうか。それとも?

沼田社長 楽しいとなった後には今度は検定試験があります。楽しいの真逆の厳しい世界です。どんなに練習していても、点数が足りなければ不合格。試験当日その場で力が出せなかったら、ダメなものはダメ。でも、やればできるんだ、と自分を信じて挑戦する。そして、達成することが楽しい、になっていくんですね。

――どのぐらい続けると、変化がでるんでしょう。

石戸珠算学園

沼田社長 個人差はありますが、3〜4ヶ月経つと集中力がぐんと高まります。2年程たつと大きく変わります。入ってきたばかりの小学校高学年の子が「できない~」って泣いていると、幼稚園から通っている小学1年生の子が「大丈夫、やれば 必ずできるから」って励ましていたりする。

――それはすごいですね(笑)。

沼田社長 それは年齢ではなく、そろばんで積み重ねた経験から、「やればできるよ。最初はできなくて当たり前だよ」と言えるようになっている。最初は、それは親が言うセリフだったんですよね。本人はできない、無理、と嫌がる。それがこんなふうに変わっていくんです。

――それは例外なく全員そうなのでしょうか?

沼田社長 そうですね。あと特徴的なのは、年齢と経験の逆転が起こることです。幼なくても、経験豊富で級が上の子もいる。自分の方が優位。それって本人にとってはアドバンテージになるんですよね。

――なるほど! その指導を行う先生には、どんな要素が求められるのでしょうか?

そろばん博物館の展示風景

沼田社長 ひと昔前、この業界ではそろばんの先生は、段位がなければなれなかったんです。いしど式では、子育て経験があって今は主婦ですという一般の女性を、講師として育てる、ということをしています。実は、子育ての経験が、生徒の力を伸ばす教育につながっていくんです。この業界では、どんどん生徒が減っていきます。そんな中、指導経験のなかった普通の主婦が講師をしているいしど式の教室に生徒が集まっていることが、不思議がられています。

――そろばんの技術よりも、育てるマインド重視ということですね。子どもの力を伸ばしたい、成長を助けたいという思いを伸ばしていくんですね! 沼田社長は、どんな経緯でこちらで働くようになったんですか?

沼田社長 幼児教育の世界からの転身ですね。20代の頃、幼稚園の先生をしていました。引っ越しをきっかけに、いしど式の存在を知って、感銘を受けて……。ちょうど20年になりますね。

――そして講師の現場を通して、現在の社長のポジションに着かれたんですね。

沼田社長 私自身は、ブルドーザーのように突き進む会長に、従順に従っていたつもりでしたけれど、会長はそうでないと言ってます、お前が一番反抗的だったと(笑)。

石戸会長 私は、同じ意見を持つ人が集まるよりも、 違う意見をぶつけ合う方が成長につながる、と考えているんですよ。

――なるほど。違うタイプだからこそ、いいんですね。ところで、ホームページを拝見したら、講師陣にとても優しい、働きやすい職場と感じたのですが。

沼田社長 講師の魅力が教室の魅力なので。講師が心地よく働ける環境を作りたいのです。

――特に女性の講師にむけた工夫があるな、と思いました。

沼田社長 そうですね。女性の場合、出産、子育て、親の介護など、本人の能力とは異なる次元で、フルタイムの勤務ができない、ということが起こります。また、配偶者の扶養家族から抜けたくない、という方もいますし。

――ご主人が会社員だと、妻が扶養家族であるメリットがありますものね。年金の積み立てとか、健康保険とか、税金のこととか。収入が年間103万円以内なら扶養家族扱いですから、月額85000円ぐらいだとちょうどいい計算になりますね。

石戸珠算学園

沼田社長 はい。「週3日(曜日固定)、3時間から」というパートタイムのスタイルもあります。基本的にそろばん教室は午後 ── 15時から授業なので、通院や家事の都合をつけやすい、という特徴があります。お子さんが小さいうちはパートで、大きくなってからは教室長へと、ステップアップしていく講師も少なくありません。

――ライフスタイルに合わせて働き方が選べると。

沼田社長 はい。最近は、短時間正社員という制度も作りました。週30時間の勤務で正社員という制度です。

――一般的には、8時間勤務で週5日=週40時間ですよね。週30時間というと、勤務日数や一日の勤務時間を選べるっていうことでしょうか。

沼田社長 はい。働く時間は少ないですが、社会保険や福利厚生は従来どおり。働く時間を少し減らしたいという講師の意見を聞いて、制度を作りました。

――すごくフレキシブルですね。「事情ができたなら仕方ない、やめてもらうしかない」っていうのが一般的な会社だと思っていました。感動です。

そろばん博物館の展示風景

石戸会長 今は、3人に1人が辞める時代と言われています。時間をかけて研修して、一人前になっても、辞めていなくなってしまっては、また、いちからやり直しでしょう。だったら、講師になってくれた方に、長く働いてもらえる環境を作るほうが、ずっと有意義ですよ。だから、講師の希望を聞いて、新しい仕組みを作っています。

――人が優先! 人を大事にする会社なんですね。一度、社員になったら、生涯を通してかかわっていける。働き方が選べるっていいですね。自分のペースで、実績を積んでいけるんですね。

沼田社長 講師のお仕事は定年もないですしね。人を育てる仕事は、大変でもありますが、その分喜びの大きい仕事だと思っています。

――イメージコントロール法は、生徒さんにだけじゃなくて、講師に対しても取り入れられているんだな、と思いました。いしど式メソッドは、大人の硬くなった脳にも効果がありそう。大人で習いにくる人もいますか?

沼田社長 社会人の方は東日本橋教室に多いですね。仕事の後に通って来られます。 昔やっていたので懐かしくてと言う人もいれば、 子供の頃やりたかったのにできなかったからという方もいますよ。

――私も子どもの頃あこがれていていた一人です。なんだか脳の新たな一面が開発されそうな気がします。いしど式のそろばんを習ってみたくなりました。

次回は、コロナ禍にまけない、インターネットを使ったシステムについてうかがいます。


6-4 そろばん博物館とグリップフレーム

6-5 女性の能力を生かす「いしど式」講師の働き方(このページです)

6-6 そろばんの「いしど式」基礎教育メソッド、海外へ!

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